共同相続人の担保責任
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共同相続人の担保責任について(民法911条)
民法911条(共同相続人の担保責任)
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売り主と同じく、その相続分に応じて担保の責に任ずる。
(1)意味
- 遺産分割の審判・調停・協議・遺言によって、相続人甲が土地Aを、相続人乙が建物Bをそれぞれ取得し、甲乙が丙に金銭を支払うことに定められたが、土地Aの地積が不足していたり、建物Bが毀損していた場合には、甲・乙・丙の取得する相続分が不公平になってしまいます。
- このような場合には、共同相続人は、売主が買主に負う担保責任(民法560~567)と同様の担保責任を負うとされます。
- 遺産分割により取得した不動産に,欠陥があり不利益を被った場合等,他の共同相続人には相続分に応じて補償する責任があります。
(2)担保責任の内容について
- 売主の担保責任には
- 「代金減額」
- 「解除」
- 「損害賠償」
があります。
「債務者の資力の担保」について (民法912条)
民法912条(債務者の資力の担保)
① 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が分割によって受けた債権について、分割当時における債務謝恩資力を担保する。
② 弁済期に至らない債権及び停止条件付の債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
(1)意味
- 例えば、遺産分割によって3名兄弟の兄が500万円の貸金債権を取得したところ、債務者から200万円しか弁済を受けることができなかった場合、300万円の損害を3名の兄弟全員が具体的な相続分に応じて負担することになります。
- この場合で、例えば兄弟の具体的な相続分が平等であった場合には、上記の300万円の損害を平等に分担して、次男100万円・三男100万円を長男に償還しなければならないということです。
(2)ワンポイントアドバイス
- 資力担保の基準時についてですが、資力担保の基準時は、
- 遺産分割時において、弁済期が既に到来している債権については、
「遺産の分割時」となります。
- 遺産分割時において、弁済期が未到来の債権・条件付債券については、
「その弁済期」となります。
無資力者の担保責任について(民法913条)
民法第913条(無資力者の担保責任)
担保の責に任ずる共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することが出来ない部分は、求償者及び他の資力のある者が、各各その相続分に応じて分担する。
但し、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
(1)意味
- 遺産分割により取得した債権が,債務不履行により損害を受けた場合には,他の共同相続人には,相続分に応じて補償する責任があります。
- 民法911条・民法912条において担保責任を負う共同相続人のうち,資力不足で支払えない者については,残りの共同相続人が,相続分に応じて分担する責任があります。
- 但し,求償者に過失あれば,他の共同相続人に分担請求できません(支払えない者の分は全てその者が負担する・民法913条)
遺言による相続人の担保責任の指定 (民法914条)
民法第914条(遺言による担保責任の特則)
前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、これを適用しない。
(1)意味
- 民法911条・民法912条・民法913条の担保責任について,「遺言」により別段の意思表示をすることによって、排除又は制限することができます(遺言でのみできます)。
(2)ワンポイントアドバイス
- 例えば、特定の相続人に担保責任を全て負わせることもできます
- また遺言によって、求償が制限された結果、ある相続文の遺留分が侵害されることに なれば、その相続人は、遺留分減殺請求をすることができるものと考えます。
☆ 共同相続人間の担保責任についてのまとめ
- 共同相続人は他の共同相続人に対して売主と同じく,その相続分に応じて担保責任を負います(民法911条)。
- 遺産分割により取得した不動産に,欠陥があり不利益を被った場合等,他の共同相続人には相続分に応じて補償する責任があります。
遺産分割により受けた債権についての担保責任
- 共同相続人は相続分に応じ,分割の時における債権の債務者の資力を担保します(民法912条)。
- 遺産分割により取得した債権が,債務不履行により損害を受けた場合には,他の共同相続人には,相続分に応じて補償する責任があります。
- 民法911条・民法912条において担保責任を負う共同相続人のうち,資力不足で支払えない者については,残りの共同相続人が,相続分に応じて分担する責任があります。
- 但し,求償者に過失あれば,他の共同相続人に分担請求できません(支払えない者の分は全てその者が負担する・民法913条)
- 上記(民法911条・民法912条・民法913条)の担保責任について,「遺言」により別段の意思表示をすることができます(遺言でのみできます・民法914条)。
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