分割後の認知
分割後に認知された相続人と遺産分割(民法910条)
民法910条(分割後に認知された者の請求権)
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
(1)意味
- 認知の効力は出生の時に遡ります(民法784)。
- けれども、「第三者が既に取得した権利を害することができない」(同条但し書き)ので、相続開始後に認知がなされた非嫡出子は、認知前に遺産分割が終わっていると、相続権を主張することができなくなってしまいます。
- しかし、それでは共同相続人間のバランスが保てず、非嫡出子の保護が十分にできないので、非嫡出子には「償還請求権」を与えて、共同相続人の既得権との調整をおこなう必要があります。
- 一方で共同相続人の一人たる遺産分割後の被認知者を除外して行った遺産分割の協議や調停が無効となると、遺産分割後の法律関係が複雑になります。
- そこで、被嫡出子の保護と、遺産分割の安定性の調和をはかるために、遺産分割後に認知されることとなった非嫡出子には、価額の償還請求による救済を与えたものです。
(2)相続開始後の認知とは
- いわゆる死後認知により認知された者
- 被相続人の生前における認知の訴えにつき、被相続人の死後、判決によって認知された者
- 認知によって相続人の子または兄弟姉妹の代襲相続人たる地位を取得した者