遺産の分割の基準
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遺産を分割する場合の基準について(民法906条)
民法第906条(分割の基準)
遺産の分割は、遺産の属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
- 遺産を相続する場合に、必ず法定相続分に従わないといけないということではありません。
- 遺言書があれば、それに従います。
- 遺言書は故人の遺志として尊重されるべきもので、仮に相続人全員が協議して、遺言書の内容と違う内容での合意に至れば、遺言内容と違う遺産分割をしてもかまわないと考えることもできますが、私はその考えには否定的です。 よほどの理由が無い限り、故人の遺志を尊重するべきです。
- なお、遺言書とは違う遺産分割が可能であると考える場合であっても、民法908条などの例外がありますので、注意してください。
- 遺言書が無い場合には、相続人の誰が、どの相続財産を引き継ぐことがもっとも自然なことであるか等を考慮しながら、各相続人の自由な意思で話合いを行うこととなります。
(1)分割の方法
遺産を分割する方法は、次の3通りの方法があります。
「現物分割」
- あの土地は長男に、預貯金は次男に・・・等といったように、遺産そのものを現物でわかる方法です。
- 現物分割では、遺産を各相続人の相続分どおりに分けることは難しい場合もあります。
「換価分割」
- 不動産などの遺産を売却して、お金に代えた上で、その金銭を分ける方法です。
- 遺産をきっちりとした相続分に分けて相続したい場合などにこの方法をとります。
- 但し、遺産の処分に際して、処分の費用や譲渡取得税などを考慮しておく必要があります。
「代償分割」
- 例えば、遺産中の土地建物を長男が取得する代わりとして、「次男には500万円」、「三男に400万円」を支払う・・・といったように、相続分以上の財産を取得する代償として他の相続人に自己の財産(主に金銭等)を交付する方法です。
(2)遺産分割の手順
1.遺言の有無を調査する。
- 自筆証書遺言であればすみやかに検認手続を行う。
- 公証人役場において被相続人作成による遺言がないか検索する(公正証書遺言検索サービス・全国のどの公証人役場でも検索できます)。
2.相続人の範囲を確定する。・・相続関係説明図の作成
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍謄本により法定相続人を確定する。
3.各相続人の相続分を確定する。
- 相続分算定において注意すべき事項
- 代襲相続人がいる場合
- 二重の身分を有する相続人(孫と養子など)がいる場合
- 廃除・欠格者がいる場合
- 非嫡出子がいる場合
- 半血の兄弟がいる場合
- 相続放棄者がいる場合
- 特別受益者がいる場合
- 寄与分権者がいる場合
4.遺産の範囲を確定する(財産目録の作成)
- 債務の調査(信用情報機関等)
- 各金融機関への預金照会
- 郵便局への預金照会
- 各市区町村の固定資産(土地・建物等)調査 など
5.遺産を「遺産分割時にできる限り接近した時点の時価」で評価する。
- 預貯金・・残高証明書
- 株式
- 上場株式・・・分割時直近の取引相場や一定期間の平均額
- 非上場株式・・・税理士や会計士等による評価
- 不動産
- 相続税路線価
- 地価公示価格
- 基準地価
- 不動産会社による査定価格
- 近隣の取引事例
等を参考に時価を算定する。
※当事者間で争いがある場合は不動産鑑定士による鑑定評価を検討する。
6.各相続人の具体的な相続分を算出する。
7.遺産分割方法を協議・決定する。
- 遺産分割協議書の作成
- 各分割案に基づく相続税の検討
- 二次相続の際の相続税の検討
- 現物分割・換価分割・代償分割等の分割方法の検討
8.遺産分割協議書を作成し、各相続人がこれに署名・押印する。
- 協議書に各相続人が署名し、実印を押印する。印鑑証明書を各1通添付する。
9.協議内容に基づき、各遺産の名義変更や遺産の売却等を行う。
- 預金口座の払い戻し
- 各金融機関
- 株式の名義書き換え
- 証券会社
- 自動車の名義変更
- 陸運事務局
- 生命保険金の受領
- 生命保険会社
- 不動産の名義変更
- 各管轄法務局
- その他
- 土地の分筆
- 測量
- 境界確定
- 売却
など・・・が、遺産分割の手順として考えられます。