遺言あれこれ
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遺言あれこれ
成年被後見人の遺言(民法973条)
第973条(成年被後見人の遺言)
1.成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2.遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
(超訳)
- 成年被後見人であっても、「事理を弁識する能力」が一時的に回復している場合には、医師が2名以上立ち会えば遺言をすることができるのじゃ。
- ただし、「事理を弁識する能力が回復していること」を確かめる必要があるので、複数の立ち会った医師が、その旨を遺言書に付記しなければならないのじゃよ。
ワンポイントアドバイス
- この手続は、全ての遺言の方式に適用があるのじゃ。
遺言の証人及び立会人の欠格事由(民法974条)
(超訳)
- 遺言の作成時に、「証人」や「立会人」が求められている場合があるのじゃが、誰でもかれでもが「証人」や「立会人」になれる訳じゃないぞ。
- 例えば、遺言をしようとする者の相続人や、遺言によって財産を譲り受ける者(受遺者)等の利害関係人や、未成年者などは「証人」や「立会人」として適当でないとされておるのじゃ!
ワンポイントアドバイス
- 本条3号の公証人の配偶者等については、公証人が公証人として関与する場合にのみ欠格事由とされるので、特別な方式(船舶遭難時など)の遺言には適用されないぞ。
共同遺言の禁止(民法975条)
第975条(共同遺言の禁止)
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
(超訳)
- 他人と共同で遺言を書くと他人の意思に左右されてしまうおそれがあるうえ、遺言の撤回が自由にできなくなるおそれもあるので、共同遺言は禁止されています。
- ここでいう「共同遺言」とは、同一の用紙に2人以上の者が遺言を行うことを禁止するものですので、別々の用紙に書いた遺言を、一通の封書に同封されていても本条にいう共同遺言にはあたりませんぞ!
- 例えば、同一の証書に二人の遺言が記載されている場合で、そのうちの一方につき氏名を自書しない方式の違背があり、他方には方式の違背が無いのであれば、結局方式に違背のない者が単独で遺言をしているのではないのか?・・・を争った裁判があるのじゃが、勿論と言っても良いとおもうが、この遺言は本条によって禁止された共同遺言にあたると判断されておるぞ。
ワンポイントアドバイス
- 二人の自筆証書遺言が綴り合せられて契印をおされ、一通の遺言書となっていても、それが容易に切りはなせる場合は、共同遺言にあたらないので有効とされた判例があるのじゃが、わざわざ争いの種を蒔くこともなかろうに・・・ね。
- 遺言を書くときには、一人でゆっくりと考えながら書いてほしいぞ~。
民法972条(秘密証書遺言の方式の特則)へ←・→民法976条(死亡危急者の遺言)へ
遺言関係者の署名及び押印(民法980条)
第980条 (遺言関係者の署名及び押印)
第977条及び第978条の場合には、遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印を押さなければならない。
(超訳)
- ちょっと思い出してほしいのじゃが・・・
- 伝染病隔離者遺言(民977)、及び、在船者の遺言(民978)については、関係者が遺言が真意に基づくものであることを保証するために署名捺印することが必要だったじゃろ。
- この「署名」は戸籍上の氏名でも通称でもかまわないのじゃが、自らその名を書く必要があり、代人に代書させることはできないぞ。
- 「押印」は、実印である必要は無く、認印でも拇印でも大丈夫なんじゃ。
ワンポイントアドバイス
- 署名捺印をすべき者とは、
- 「遺言者」
- 「立会い人」
- 「警察官」
- 「船長」
- 「事務員」
- 「証人」
- 「筆者」
署名又は押印が不能の場合(民法981条)
第981条(署名又は押印が不能の場合)
第977条から第979条までの場合において、署名又は印を押すことのできない者があるときは、立会人又は証人は、その事由を付記しなければならない。
(超訳)
- 上記3つの特別方式の遺言において、署名捺印をすべき者でそれをなしえない者がある場合には、その事由を付記することが必要なんじゃ。
- 署名捺印すべき者は、
(1)伝染病隔離者の遺言(民977)
→ 「遺言者」、「筆者」、「立会人」、「証人」
(2)在船者の遺言(民978)
→ 「遺言者」、「筆者」、「立会人」、「証人」
(3)船舶遭難者の遺言(民979)
→ 「証人」
- 署名捺印できない理由は、
- 「無筆」
- 「病気」
- 「負傷」
- 「印を持参していない」
- 「その他」
・・極端に言うと何でもかまいまへん。
- また、この場合には立会人または証人がその事由を付記するようにしてくださいね。
ワンポイントアドバイス
- この付記がないと遺言は無効となるので注意してね!
- 解釈上は関係者の最低一人は署名押印する必要があるともいわれています。
「普通方式による遺言」の規定の準用(民法982条)
第982条(普通の方式による遺言の規定の準用)
第968条第2項及び第973条から第975条までの規定は、第976条から前条までの規定による遺言について準用する。
(超訳)
は、特別の方式の遺言についても準用されます。
特別の方式による遺言の効力(民法983条)
第983条(特別の方式による遺言の効力)
第976条から前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6ヵ月間生存するときは、その効力を生じない。
(超訳)
- 特別な方式の遺言は、やむを得ない特殊な事情のもとで、普通方式の遺言がすることができない場合に限って許される簡易な方式です。
- したがって遺言者の真意を確保するという点では、どうしても普通方式の遺言に劣るという欠陥があります。
- ということは、通常の方法による遺言が可能になった後は、なるべく早くに改めて普通の方式で遺言をすることによって、遺言を確実にすることが望まれます。
- そこで、特別な方式な遺言は、特殊な状態から脱してから6ヶ月で効力を失うものとしました。
ワンポイントアドバイス
※特殊な状態から脱したとは・・・
- 「死亡の危急を免れた時」
- 「高越遮断の行政処分がとかれた時」
あ
- 「本国または日本領事館の駐在する外国くの領土に上陸した時」
あ
- 「死亡の危急を免れ、かつ、本国または日本領事館の駐在する外国くの領土に上陸した時」
あ
・・・のことを言いますぜ!
外国に在る日本人の遺言の方式(民法984条)
第984条(外国に在る日本人の遺言の方式)
日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によって遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事が行う。
(超訳)
- 外国にいる日本人も遺言をすることができるのじゃが、その場合にはどこの国も法律に基づいて遺言を作成しなければならないのか?・・・という問題じゃ。
- 結論からいうと、「遺言の成立及び効力は、その成立当時における遺言者の本国法による(法例26)」ことになる。
- よって、外国にいる日本人も日本の法律に従って遺言を作成することができるわけじゃ。
ワンポイントアドバイス
- なお、海外在住の日本人は上記の方法のほか、外国法に基づいて遺言をすることも出来ないわけじゃないぞ。
- ただし、日本にある不動産を誰に相続させるかなどを遺言したければ、できるだけ日本の法律に基づいて遺言をするべきじゃな。