受贈財産の評価について
受贈財産の評価について(民法904条)
民法第904条(受贈財産の評価)
前条に掲げる贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的たる財産が滅失し、又は、その価格の増減があったときでも、相続開始の当時なお現状のままで在るものとみなしてこれを定める
- 前条(民903条)によって、特別受益となる受贈財産の評価に関する規定です。
- 受贈財産が受贈者の行為によって、「滅失」し、又は、「その価額に増減」があった場合でも、相続開始時になお原状(受贈当時の状態)のままであるものとみなして評価する旨を規定しています。
特別受益となる受贈財産の評価の時期
- 「相続開始時説」と「遺産分割時説」との対立があります。
- 通説及び審判実務では、「相続開始時説」を採用しています。
特別受益となる受贈財産の評価の方法
受贈者の行為によって、滅失又はその価額の増減があった場合
- 「受贈者の行為による」とは
- 受贈者の故意による場合
- 受贈者の過失による場合
の両方を含むものと考えます。
- 「受贈財産の滅失」とは
- 火災による焼失や取り壊し等の物理的な滅失
- 贈与・売買等の法律行為による経済的な滅失
の両方を含みます。
※ たとえば
贈与当時1000万円の不動産が、その受贈者の過失で焼失したり、その他1500万円で売却して金銭に換えた場合であっても、その不動産がなお贈与時の状態のまま存在するものと仮定して、相続の開始時にその不動産が1200万円と評価されるべきものであれば、その贈与は1200万円の価額となります。
- 「受贈財産の価額の増減」とは
- 物価の変動
- その使用・修繕・改良・損傷
等によって、財産の価額に増減を生じるという意味です。
※ たとえば
受贈者が受贈された建物に建て増しをした場合には、建て増しをしない家屋のままで存在するものと仮定して、相続開始時の価額で評価する・・ということです。
- 「受贈財産が受贈者の行為によ滅失したり、その価額の増減があった場合」とは
- 受贈財産が天災などの不可抗力で滅失した場合には、その価額を受贈者の相続分から差し引くことは酷であると考えられています。
- 受贈財産の価額は加算されず、従ってその者は何も贈与を受けなかった物として相続分を算定することになると考えます。
- 受贈財産が、インフレやデフレなどにより、その価額が増減した場合には、相続の開始時のその物の時価によって評価を行うことになると考えます。
※受贈財産が天災や、インフレデフレ等の不可抗力によらず、また、受贈者の行為にもよらずに、自然に滅失したりした場合には、それらが受贈時の状態のまま、相続時にもそんざいする物として評価されるべきである。
金銭の贈与を受けた場合の評価
- 受贈財産が金銭である場合には、金額は受贈当時でも、相続開始時でも、遺産分割時でも、変わることはないので、受贈当時の金額で計算するより方法が無いはずである。
- しかしそれでは、不均衡が生じる恐れがあるので、様々な判例や学説が言われています。
- 遺留分に関するものであるが、最高裁は「贈与のときの金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもって評価すべきものと解するのが相当である」旨を判示した。
- よって、金銭は贈与時の金額を物価指数に従って相続開始時の金額に評価換えを行う必要があると考えます。
ワンポイントアドバイス
- なお、本条の規定は、前条と共に、「遺留分(民1044)」に準用され、遺留分算定のため持ち戻されるべき贈与の評価についても適用されます。